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〝江川式〟擬洋風建築
-江川三郎八がつくった岡山・福島の風景-

LIXILギャラリー

旧亀岡家住宅 (1904年、1995年に福島県伊達市に移築、国指定重要文化財)

撮影:小野吉彦

LIXILギャラリー

〝江川式〟擬洋風建築-江川三郎八がつくった岡山・福島の風景-

元堂宮大工の建築技師・江川三郎八が、明治から昭和にかけ福島と岡山で手がけた擬洋風建築の数々。公共から商業建築まで幅広く、両県に西洋の風をもたらしました。意匠やプロポーションに共通性が見られる江川の建築は「江川式」とも呼ばれます。本展は、神社を含む現存の9作品を中心とした〝江川式〟擬洋風建築を、撮り下ろし写真や古写真、また模型他実資料など約80点で紹介し、知る人ぞ知る江川式建築の存在に迫ります。

江川三郎八(1860-1939)は、故郷の福島と赴任先の岡山で県の建築技師として、学校、警察署、銀行などの擬洋風建築を主に、多くの建築設計に携わります。岡山では「江川式建築」と呼ばれ、同県の建築デザインを特徴付けるまでになりました。その真骨頂は福島で出会った洋式の橋梁構造(トラス)を取り入れた独自の「江川式小屋組」です。「遷喬(せんきょう)尋常小学校本館」(旧称、1907、岡山、国指定重要文化財)の講堂が好例で圧巻の大空間を創造しました。これを筆頭に、いくつか共通する江川好みの豊かな意匠、また日本建築の寸法体系など元堂宮大工ならではの癖もまた江川式建築に独特のリズムと印象を与え愛着が湧きます。江川式建築は、自伝『生ひ立ち之記』の存在とともに、長らく在野で熱心な探索・研究がなされる中、学術的に注目されたのが2004年の「旧吹屋小学校校舎」(1909、岡山、県指定、修理工事中)の調査です。その際、県内でいくつもの江川式建築が調査の対象となりました。2013年には同県で江川三郎八研究会が有志メンバーで結束され、彼らの研究と普及活動により岡山ではさらにその存在と価値が知られるようになります。福島でも現存する該当建物は少ないものの、県下での調査活動が始動しています。本展では、〝江川式〟が特に色濃く出る時代の建築のうち、岡山から8作品、また福島からはその源流とも考えられる1作品の計9作品を撮り下し写真と解説で紹介します。その他関連の模型4点等実資料や、かつてあった作品も豊富な古写真でご案内します。幸いにも現存作品が多い江川式建築です。同展を機に江川式建築に触れていただき、当時の風景を思い浮かべながら、その魅力をご堪能ください。

 

<現存する江川式建築9作品を取材、撮り下ろし写真と解説でそれらのエッセンスを紹介>

文化財建造物の撮影を得意とする建築写真家・小野吉彦による撮り下ろし写真で、江川式建築の見どころを余すところなく紹介します。

明治の全国的な学校建築ラッシュの中、岡山に赴任したばかりの江川は県下市町村の小学校・幼稚園を多く設計します。
遷喬尋常小学校本館は映画「ALWAYS 三丁目の夕日」の舞台にもなりました。木造二階建てで装飾的な中央部が強調された左右対称の大規模な校舎です。外観には江川式建築を特徴づけるバッテンの意匠。これはトラスを意匠化したもので他の作品でも頻繁に見られます。
また同小学校本館中央棟の2階全体を占める広大な講堂は、二重折上格天井が圧巻。この無柱の大空間を可能にしたのが「江川式小屋組」と自身が名付けた天井裏の木造トラスです。江川は、福島在任中、「須賀川橋」など洋式の架橋工事に携わり、力学的知識を深めました。そして、橋を彷彿させる構造や意匠を江川の建築の大きな特徴としていきます。
同作品については、写真以外に建物に付随していた和瓦スレートや五輪塔を模した屋根飾りのフィニアルなど実資料も展示します。
「旭東(きょくとう)尋常小学校附属幼稚園舎」(旧称、1908、国指定重要文化財)は江川好みのマンサード屋根に、八角形の中央棟から四辺に切妻棟が放射線状に突出するというユニークな平面デザインで近代建築史上にも高い価値を持つ作品です。中央棟は広く開放的な遊戯室となっています。

 

<構造模型でみる江川の木造トラスの進化!>

八角形の棟(遊戯室)をもつ、江川が関わったとされる「倉敷幼稚園舎」(旧称、1915、国登録有形文化財)の構造模型(1/30)。違いは八角形の遊戯室中央に、旭東尋常小学校附属幼稚園舎では柱が立ち、倉敷幼稚園舎にはそれがないことです。前者はまだ和と洋の小屋組みが混在し柱が必要でしたが、後者では完全なトラスに進化させ、無柱空間をつくり上げました。会場には旭東と倉敷の両幼稚園舎の外観模型と構造模型を展示します。見比べてご鑑賞ください。

 

<古写真でみる江川がつくった岡山・福島の風景>

自伝『生ひ立ち之記』(1929、古希の年)により、岡山と福島で江川が携わった建築がいくつも明らかになります。ここではかつての絵葉書から、それらが写る当時の両県の風景写真25点を八角形のパネル空間で紹介します。さらに、江川を「江川式小屋組」に至らせたきっかけとなった2代目「須賀川橋」(1892年、福島)の古写真も展示します。県内初の美しい西洋式木造トラスの橋梁です。

 

■展覧会公式サイトはこちら

会期 2020年3月5日(木)~5月23日(土)
会場 LIXILギャラリー東京
開館時間 10:00~18:00
休館日 水曜日
入場料 無料
アクセス
・東京メトロ銀座線「京橋駅」1、2番出口 徒歩1分
・東京メトロ有楽町線「銀座一丁目駅」7番出口 徒歩3分
・都営浅草線「宝町駅」A4番出口 徒歩3分
・JR「有楽町駅」京橋口 徒歩7分